4.納期対策の勘所と事例
(6)現品管理と在庫の対策その4:見込み在庫の対策
「生産清流化」は納期病の治療法である。実行する場合の在庫面の勘所を紹介する。
清流化で必ずといっていいほど実施することになるのが在庫面の対策である。納期病とは、現象面では情報とモノの滞留である。これをなくすことが治療のひとつである。
在庫は重要との関係で2種類に大別できる。確定在庫と見込み在庫である。「確定在庫」とは、製造時に顧客の確定注文や後工程の確定計画と対応づけられるものであり、後工程の需要数量は確定しているが、一時的に停滞している在庫である。一方「見込み在庫」とは、製造時に顧客の確定注文や後工程の確定計画と対応しないものであり、後工程の需要数量が未確定の段階で、見込みで作った在庫である。
在庫停滞を減らそうとしたとき、やっかいなのが「見込み在庫」である。需要の不確定性が停滞する要因のひとつになっているからである。その他にもいくつかの要因が関係している。まずどんな要因があるかを認識することが見込み在庫による停滞を減らす第一歩となる。
見込み在庫は、車の運転に例えるとわかりやすい。2台の車が走っているとしよう。先行する車は工場である。後に続く車は需要である。工場が先行しているといいうことは実需要よりも先行して生産していることを表す。したがって車間距離が「見込み在庫」に相当する。実需要の車の速度は変化する。先行する工場車のスピードつまり供給量が多すぎると車間距離が広がる。逆にスピードが遅すぎると車間距離がなくなって追突する。つまり在庫ショートによる欠品である。
車間距離を適正に保つには5つの要因がある。まず、工場車の運転手が周囲の車の流れをよく見ることである。周囲の車の流れを見ることは景気や業界動向を見て需要を予測することに該当する。
2番目の要因は、たバックミラーで後続車との車間距離を見ながらアクセルとブレーキを調節することである。これは需要予測と在庫実績に基づいて生産計画を立てることに相当する。
3番目の要因は、エンジンのパワーである。後続車が早い場合にはエンジンの馬力がないと車間距離を保てない。これは生産余力に相当する。
4番目はアクセルやブレーキに対する応答性である。アクセルやブレーキの操作が実際に効くまでのタイムラグが小さいほど車間距離を保ちやすい。これは製造のリードタイムに相当する。リードタイムとは、作ろうと思ってから実際に出来上がるまでのタイムラグである。
5番目はギヤの段数である。きめ細かく速度調節するには、ギヤの段数が多いほど有利である。これは製造のロットサイズに相当する。ロットサイズがきめ細かく選べないと生産量の調節は困難である。
一般に需要予測と生産計画は生産管理部門の役目である。そして生産余力・リードタイム・ロットサイズの改善は製造部門の役目である。これらの要因を改善していくことが見込み在庫の改善につながる。