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製造企業のデリバリー管理とSCM
第1章 デリバリー管理
1.3 デリバリー管理実施上の障害と全社的デリバリー管理
 (5)必要な5つの活動

 デリバリー管理を推進するための5つの要件を満たすデリバリー管理の標準形とは、どのようなものでしょうか。それぞれの要件に対応した以下の5つの活動が必要です。

 ・デリバリー保証:
   全社の業務プロセスと経営トップを含む全階層をカバー
 ・方針管理:
   目的・方針を明確にし、その実現をフォローアップする
 ・改善活動:
   各業務プロセスをレベルアップし、新しいビジネスプロセスを実現する
 ・創発活動:
   関係者が現状のプロセスのレベルを認識し、
   新しいビジネスプロセスを描く
 ・評価制度:
   評価指標を変え、現場の抵抗感をなくす

 それでは個々の活動について概要を説明しましょう。

@デリバリー保証
 リードタイム短縮・納期保証・在庫圧縮を果たしながら商品の企画、開発、製造、販売とその経営管理、業務管理の諸活動が実行されることを指します。TDMの他の4活動の結果、レベルアップされる活動です。

 具体例としては以下のようなものが挙げられます。

 ・商品企画における納期目標の設定、デリバリー経路の設定、死に筋商品・
  旧商品のディスコン
 ・商品開発における短納期部品の選定、共通部品化による在庫削減、コンカ
  レントエンジニアリングによる開発期間短縮
 ・製造におけるセル生産化による生産リードタイム短縮と仕掛り在庫削減、
  ワークフロー化による事務リードタイム短縮
 ・販売における小売店との共同在庫化、在庫拠点統合による在庫削減、共同
  配送化による客先納期短縮

A方針管理
 方針管理は目的・方針を明確にし、その実現をフォローアップする活動です。一般に方針管理とは「企業理念、中期経営計画をブレークダウンし、企業内外の環境変化を盛り込んだ年度方針を設定し、フォローアップしていく活動」とされています。

 TDMではそれに加えて、後述する「創発活動」で共有化された情報に基づき、「評価制度」で新しく設定されたデリバリーに関する評価指標とその目標を年度方針に盛り込むことを意味します。その目標に向かって、改善活動でデリバリー保証をレベルアップしていきます。

B改善活動
 各業務プロセスをレベルアップし、新しいビジネスプロセスを実現する活動です。改善活動は、狭義には小集団サークルで自律的に行われる改善活動を指します。しかしながらTDMにおける改善活動は、次のような要素を含んだ広義の活動です。

 ・教育:活動の主体である従業員一人一人に対する教育です。 TDMの理念
  や各種の基礎的手法を従業員に教育します。従業員の平均的能力が高く、
  意思決定が分散している特質を持つ日本企業での展開では、ひとりひとり
  の意識と能力を高めることがポイントです。
 ・分析:改善活動で使う現状把握や分析のための手法を指します。
 ・プロセス改善:デリバリー改善を直接具体化する活動です。小集団での活
  動だけでなく、プロジェクトチームや通常組織での改善活動と、その活動
  で使う改善手法、チームでの改善統括の方法論を含みます。

C創発活動
 関係者が現状のプロセスのレベルを認識し、新しいビジネスプロセスを描く活動を指します。

 一般的に欧米企業の意思決定はトップダウンであると言われています。国や企業によって程度の差はありますが、トップとそのスタッフが設計した役割と手順に従って従業員は業務を遂行すればよい、という考え方です。各部署の役割を変える場合もトップからの指示に基づいて行われます。極論すれば企業は一種の機械であり従業員はロボットと同じであるということです。

 一方、日本企業では、従業員の平均的能力が高く、意思決定が分散していることが特徴です。これも企業によって差がありますが、計画・遂行・反省を通して関係者が相互に情報交換しながら業務を遂行するのが典型的な姿です。  通常はひとつの部署が自律的な個体となり、自部署と他部署の違いを自ら認識し、その違いを基盤として自部署の構造を自ら作り上げ、さらに予期・予測に対して合っているか、外れているかの情報をもとに自らの構造を変化させるといった動きもしています。 欧米の機械的組織形態に対して、日本の場合はひとつの部署が細胞となった、生体的組織形態です。

 欧米流の機械的組織は、決定された目的をそのまま変更せずに、無故障や無刷新という前提のもとで実現するには適しています。しかし、多様な目的をダイナミックな環境のもとで達成するには適していません。こうした環境では日本流の生体的組織形態が向いています。

 全社的な改善を進める場合、欧米と日本の組織形態には、それぞれ適したアプローチがあります。欧米企業の機械的組織には、設計主義のアプローチが適しています。一方、日本企業の組織で全社的な改善を進める場合には自己構造変化アプローチが適しています。

 日本企業も部分部分を見ると設計主義アプローチで改善できます。しかしながら全体は生体的組織を形成しているため、一種の複雑系であり、全社的改善には、従来の主流だった設計主義アプローチよりも複雑系システムに対するアプローチが適しています。

 設計主義のアプローチでは、表1.2のように「調査」「分析」「設計」「実施」「管理」のステップで改善を進めます。ここで関係者は「設計者」「実施者」という、ふたつの立場に大別されます。そして設計者が改善の主役です。

    表1.2 設計主義アプローチ
調査設計者がシステム部分部分の情報を調査する
分析設計者が部分部分を理解する
設計設計者が設計図を提示する
実施実施者が実施する
管理設計者が実施者にフィードバックして矯正する

 これに対し、自己構造変化アプローチでは、表1.3のように「共有」「洞察」「共鳴」「進化」「適応」のステップで進めます。ここでは関係者の立場は対等です。それぞれの関係者全員が主役となって、自律的に全体ビジョンに向かって改善を進めることが特徴です。

    表1.3 自己構造変化アプローチ
共有関係者がシステム全体の状態情報を体験により共有する
洞察関係者全員が生きた言葉、物語によって全体を洞察する
共鳴関係者全員で全体ビジョンを描き、共感する
進化関係者が自律的に改善を進める
適応関係者自身が周囲の情報をフィードバックして変化する

 また、TDMが対象とするリードタイム短縮、在庫削減などデリバリー問題は、様々な部門の活動が相互に影響するという特性があります。

 例として在庫量を減らすため、拠点間輸送頻度を上げようとした場合を考えてみましょう。送り出す側の出庫頻度が上がれば、当然受ける側の入庫頻度も多くなります。ある場所で良くしようとすると別の場所でマイナスの影響が発生します。

 別の例として新製品開発を考えてみましょう。新製品開発期間を短縮し、開発部門から製造部門へ設計図の出図のタイミングが早くなった場合、製造部門で治工具、製造設備や材料の準備も早くしなければ開発期間短縮の効果が出ません。

 ふたつの例からわかるように、デリバリー問題が対象とする在庫や輸送や停滞は、部門間・拠点間・工程間で発生するのが普通です。製造、物流の拠点や工程が分割していると、それに対応して部門も分割していることが多いため、拠点間・工程間の問題は殆ど部門間の問題と言い換えられます。

 また、設計図と治工具と材料が揃わないと新製品の製造ができないといった順序制約は、あちこちに存在し、決して特殊な現象ではありません。しかしながらデリバリー問題を改善しようとすると、こうした順序制約を部門間にまたがって取り扱わなければならないことが、問題を複雑にしています。

 さらにデリバリー問題は、部門間の相互関係、順序制約があるなかで、タイミングという時間軸を絡めた思考が要求されます。時間経過は目に見えないため、不慣れな人には直感的な理解が困難です。

 一方、例えば品質問題の場合、こうした状況は比較的少ないのです。ある部門の不良率が下がれば他部門では好影響だけが出ることが通常です。また製造物の品質は目で見ればわかる場合が多いですし、目で見えない品質特性値も計測手法が確立しているものが大部分です。

 部門間にまたがり、タイミングを扱うために、デリバリー問題は、関係者がその現状すらよく理解していないことが多いものです。各プロセスの状態がどうなっているのか、あるいは各部門がどういう方向で改善しようとしているのか、といったことを相互に理解していないことが多いのです。デリバリー問題はこうした特性から、それ自体一種の複雑系とみなせます。

 複雑系である日本企業の組織で、複雑系のデリバリー問題を改善しようとした場合、やはり設計主義のアプローチではなく自己構造変化アプローチが適しています。つまり、デリバリー改善には、まず現状の情報を「共有化」し価値観や方向性に「共鳴」していくという活動が不可欠です。TDMではこうした活動を「創発活動」と呼んでいます。

 「創発」とは複雑系システムにおいて、自律的に存在している構成要素どうしが、その間で局所的な相互作用を行った結果、複雑な全体構造や挙動が現れ、その全体がまた部分への環境となることを意味しています。つまり部分と部分の相互作用、部分と全体の相互作用によって全体の特性が変化していくことを指しています。TDMではこの複雑系システムの言葉を借りて「創発活動」と呼んでいます。

D評価制度
 TDMにおける「評価制度」とはデリバリーに関する評価指標を設定する活動を指します。評価指標を変え、現場の抵抗感をなくし、さらに改善を誘導するための活動です。

 「創発活動」で述べたようにデリバリー問題は他の問題より複雑なため、価値観や改善の方向性はおろか現状認識も共有化されていないことが多いのです。したがって、現状レベルや目標レベルを測定する評価指標も設定されていない場合があります。ですからデリバリー改善には従来使われていなかった管理指標を設定する活動が必要です。

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