納期半減の生産清流化
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製造企業のデリバリー管理とSCM
第2章 サプライチェーンマネジメントの実践
2.4 SCM展開上の問題と対策
 (1)人と組織の問題

 本節では、 製造業でSCMを展開しようとしたときに直面する代表的な問題について紹介します。そしてその対策方向を提示します。最初は人と組織に関する問題です。

問題1:トップの無関心/暴走
 SCMを展開するにはビジネスプロセス横断的な取り組みになります。開発、調達、生産、販売などの各部門が、同じ方向を目指して進むことが必要です。それには経営トップが先導して、トップダウンに進めることが必須となります。  経営トップの無関心は致命傷です。トップが無関心ではSCMは進展しません。一方トップが暴走する場合があります。自社のビジネスプロセス、それを支える情報システム、改革の原動力である個人や組織の改革力を正当に認識していない時に発生します。改革力が課題であるにもかかわらず、「IT革命」といった言葉のイメージだけを頼りに、情報システム投資を決定してしまうといったケースが暴走の典型例です。

対策1:先進企業の見学
 トップが無関心な場合、有効なのは先進企業の見学です。百聞は一見に如かずの諺どおり、言葉で聞くよりも現地を見るのが一番です。SCMを実践して効果をあげている企業をトップが訪問し、その内容と経営効果を直に感じることが転機となる場合があります。経営者として優秀ならば、現場を見れば関心を持つはずです。

 トップの暴走は自社の実力を、客観的に評価することが対策となります。第三者の目からビジネスプロセス・情報システム・改革力を評価してもらい、それに基づいてSCM推進の作戦を立てることが有効です。

問題2:機能別組織
 製造業の場合、営業、生産、開発、財務、総務といった機能別の組織をとるのが一般的です。企業規模が拡大した場合には、機能別組織から顧客別あるいは商品群別の事業部や事業本部制に分割することがよくあります。営業や生産などは各事業部の中に持つ形です。顧客への対応に関する機動性を増すのが狙いです。

 問題は、企業規模や事業領域が拡大しても営業部、生産部の機能別組織が最上位にある場合です。営業本部や生産本部などと呼ばれることも多いでしょう。それぞれの人数が多く、別の役員が業務執行を担当しています。

 SCMでは営業、生産、開発と組織間をまたがる連動が重要です。しかし、大規模な機能別組織では、組織間をまたがる業務プロセスや意思決定のスピードは下落します。

対策2:顧客別の組織
 SCMを推進したければ、機能別組織から顧客別あるいは商品群別の事業部や事業本部制に移行すべきです。さらに発展すれば、社内カンパニー制度や、分社化への移行が考えられます。ただし、作り手からみた商品の類似度で商品群を分けてはいけません。顧客セグメントからみた、商品群別に事業部やカンパニーを分けるべきでしょう。

問題3:キーマンの検討時間
 SCMを実現するためには、新しい業務プロセスを検討しなければいけません。企業全体の業務プロセスの構造と、個々のプロセスの内容を両方知っている必要があります。その主役は、課長クラスの管理者です。中でも変革意欲のある人材がキーマンとなるでしょう。

 しかしキーマンは、他の業務で多忙なことが多いのです。キーマンの検討時間不足が、SCM推進の問題となることがよくあります。

対策3:ワークショップの利用
 多忙だからといって、時間をかけなければ進みません。細切れに時間をとるよりも、2〜3日集中して検討したほうがよいでしょう。例えば土日を利用したワークショップを開催し、そこで集中検討することが考えられます。場所も宿泊施設などを利用し、時間的にも場所的にも、日常業務から隔離して検討することが有効です。

問題4:用語・基礎知識
 関係者の間の基礎知識に差があることが、推進上の問題になることがあります。個人によってSCMに関する基礎知識に差があるだけでなく、組織間で基本的な用語の差がある場合があります。

 例えば「センザイ」に対して、営業部門の人は「宣伝材料」を思い浮かべ、製造部門の人は製品洗浄用の「洗剤」をイメージするかもしれません。営業の人が「商材」と言ったのに対して、資材の人はガラス材料の「硝材」と勘違いする場合もあり得ます。

対策4:創発活動
 少なくとも推進キーマンの間では、用語や基礎知識のレベルを揃える必要があります。SCMの知識に関しては、本による学習、事例調査、先進企業見学などを通してコミュニケーション基盤を底上げします。

 大企業では、営業、開発、生産の間で、日常から相互交流を図っておく必要があるでしょう。また、日常生活で登場しない仕事上の用語を部門間で使う場合には、定義を明確にすべきです。例えば「生産リードタイム」とは「資材発注してから製品を納入するまで」なのか、あるいは「最終製品の生産計画を立ててから製品が完成するまで」なのかを関係者の間で確認することが必要です。またその最短を指すのか、平均を指すのかなども定義することが重要です。

問題5:組織の変革力
 SCMの実行段階では、組織の変革力そのものが問題になります。SCMの実行には、業務プロセスや評価制度の変更を伴います。変化に対する抵抗感や、変化する場合の指揮統制の乱れがあると展開上の障害となります。

対策5:常に変化する組織風土
 SCMに限らず、現代の企業にはスピードが求められます。スピードとは時間に対する変化率です。変化しない所にスピードは生まれません。大小の変化を常に起こすことが重要です。何かを常に変えることを経営者が求めることがSCMの第一歩でしょう。

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